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史哉さんとミイ🐱
史哉さんは、慣れた手つきであたし…ミイのスペースをこしらえてくれた。
ふかふかのベッドと砂のトイレ。
ミルク飲んだらお腹がくーってなってたから、抱っこされても落ち着かなくて、すぐにトイレ作ってくれて助かったぁ。
…史哉さんの目の前ではちょっと、って思ったら史哉さんが向こう行って、その隙に…と言っても片付けてくれるのは史哉さんだから、申し訳なくて恥ずかしい。
とは言え、史哉さんにとってあたしはネコのミイ。だから気にすることないんだけど…姿はネコでも心は美衣だから気になっちゃう。
なるべく史哉さんの手を煩わせないように気をつけよう。
そういえば、ソファに置いてる見覚えのあるバッグ、もしかしてあたしの?
「これさ、ミイちゃんの近くにあったの。落し物かなって、悪ぃかと思ったけど中見たら、あのカフェでバイトしてる子のみたいで…」
史哉さん、あたしに話しかけてる?
「鍵とかケータイ、財布も入ってんの。大事なもの全部なくして困ってるよね、届けようかと思ったけど、今度店長に会えたら渡すんでいいかな」
やっぱりあたしに話してる。
うんいいよ、拾ってくれてありがとう、って言いたくて、小さく、みゃぁ、って鳴いた。
「やっぱそれでいいと思う?」
言いながら抱き上げて、また抱っこ。
「あったけー、ミイちゃんかわいー」
史哉さん、ネコ飼ってたことあるのかな。慣れてるし。
「前、旅行するやつのネコ預かったんだけど、そんときの」
トイレを指してる。
「ベッドはミイちゃん用に、いいタオル出したよ」
毛がついちゃうのに…ふかふかのタオルうれしいけど、お洗濯大変じゃない?
ありがとうって伝えたくて、史哉さんにくっついてみた。
「気に入ってくれてよかった」
史哉さん、今度はほっぺたにキスする。
ネコの姿でもうれしいし、くすぐったい気持ち。
「お風呂行ってくんね」
あたしはどうやらホントにネコになったらしいけど、まだその姿かたちを見てないから信じがたい。史哉さんがいないうちにとうろうろしたら、窓に映るネコが目に入る。
窓に駆け寄ると、そこには紛れもない真っ白なネコ。確かに、カフェの絵のネコそっくり。
小さく声を上げたら、みゃあ、だし、よく見るとしっぽもある。完全にネコ。
理由はわからないけど、美衣はミイになっちゃった。
はーっ…カフェが閉店な上にネコ?!
どうすれば人間に戻れるんだろ…
悩んでたらお風呂の音がして、部屋をうろついたのがバレないように、急いでベッドに戻る。
「ミイちゃん、どう、ベッド快適?」
キャー!!待って史哉さんっ!
腰にバスタオル1枚で上がってくるなんて…
しかもそのまましゃがんであたしを撫でるなんてちょっと〜!
ドキドキなんてもんじゃない。見えそうなんだもん…
「ちょっと待ってて」
向こうからドライヤーの音がしてる。
はぁぁ…びっくりした!
けど、史哉さん、細身だけどガッシリしてて筋肉キレイについてた。カッコイイな〜。
「ふー、サッパリした、ミイちゃんおいで」
抱っこされてソファへ。
「ちょっと付き合って」
あたしをソファに座らせて、史哉さんはキッチンへ。何かカチャカチャ聞こえる。
「…ひとり反省会」
ワイングラスにこぽこぽと注がれる、いい音。
おつまみはチーズとナッツ。
「もうちょいなんだけど最後決まんねっつーか、浮かんでこなくてさー」
あたしを抱っこして飲みながらしゃべってる。そんな史哉さんを、ずーっと眺めてた。
「あんま悩んでもしかたねーか、ミイちゃん、眠ぃのに付き合ってくれてありがとな」
キスされたら、ちょっとお酒くさい。
「ミイちゃん、やっぱあっちで一緒に寝よ」
作ってくれたベッドとトイレを寝室に運んで、
あたしは憧れの史哉さんと同じ部屋で寝ることに!
…美衣じゃなくてミイだけど、ドキドキだよぉ。
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