史哉さんとミイ🐱

1/1
前へ
/7ページ
次へ

史哉さんとミイ🐱

史哉さんは、慣れた手つきであたし…ミイのスペースをこしらえてくれた。 ふかふかのベッドと砂のトイレ。 ミルク飲んだらお腹がくーってなってたから、抱っこされても落ち着かなくて、すぐにトイレ作ってくれて助かったぁ。 …史哉さんの目の前ではちょっと、って思ったら史哉さんが向こう行って、その隙に…と言っても片付けてくれるのは史哉さんだから、申し訳なくて恥ずかしい。 とは言え、史哉さんにとってあたしはネコのミイ。だから気にすることないんだけど…姿はネコでも心は美衣だから気になっちゃう。 なるべく史哉さんの手を煩わせないように気をつけよう。 そういえば、ソファに置いてる見覚えのあるバッグ、もしかしてあたしの? 「これさ、ミイちゃんの近くにあったの。落し物かなって、悪ぃかと思ったけど中見たら、あのカフェでバイトしてる子のみたいで…」 史哉さん、あたしに話しかけてる? 「鍵とかケータイ、財布も入ってんの。大事なもの全部なくして困ってるよね、届けようかと思ったけど、今度店長に会えたら渡すんでいいかな」 やっぱりあたしに話してる。 うんいいよ、拾ってくれてありがとう、って言いたくて、小さく、みゃぁ、って鳴いた。 「やっぱそれでいいと思う?」 言いながら抱き上げて、また抱っこ。 「あったけー、ミイちゃんかわいー」 史哉さん、ネコ飼ってたことあるのかな。慣れてるし。 「前、旅行するやつのネコ預かったんだけど、そんときの」 トイレを指してる。 「ベッドはミイちゃん用に、いいタオル出したよ」 毛がついちゃうのに…ふかふかのタオルうれしいけど、お洗濯大変じゃない? ありがとうって伝えたくて、史哉さんにくっついてみた。 「気に入ってくれてよかった」 史哉さん、今度はほっぺたにキスする。 ネコの姿でもうれしいし、くすぐったい気持ち。 「お風呂行ってくんね」 あたしはどうやらホントにネコになったらしいけど、まだその姿かたちを見てないから信じがたい。史哉さんがいないうちにとうろうろしたら、窓に映るネコが目に入る。 窓に駆け寄ると、そこには紛れもない真っ白なネコ。確かに、カフェの絵のネコそっくり。 小さく声を上げたら、みゃあ、だし、よく見るとしっぽもある。完全にネコ。 理由はわからないけど、美衣はミイになっちゃった。 はーっ…カフェが閉店な上にネコ?! どうすれば人間に戻れるんだろ… 悩んでたらお風呂の音がして、部屋をうろついたのがバレないように、急いでベッドに戻る。 「ミイちゃん、どう、ベッド快適?」 キャー!!待って史哉さんっ! 腰にバスタオル1枚で上がってくるなんて… しかもそのまましゃがんであたしを撫でるなんてちょっと〜! ドキドキなんてもんじゃない。見えそうなんだもん… 「ちょっと待ってて」 向こうからドライヤーの音がしてる。 はぁぁ…びっくりした! けど、史哉さん、細身だけどガッシリしてて筋肉キレイについてた。カッコイイな〜。 「ふー、サッパリした、ミイちゃんおいで」 抱っこされてソファへ。 「ちょっと付き合って」 あたしをソファに座らせて、史哉さんはキッチンへ。何かカチャカチャ聞こえる。 「…ひとり反省会」 ワイングラスにこぽこぽと注がれる、いい音。 おつまみはチーズとナッツ。 「もうちょいなんだけど最後決まんねっつーか、浮かんでこなくてさー」 あたしを抱っこして飲みながらしゃべってる。そんな史哉さんを、ずーっと眺めてた。 「あんま悩んでもしかたねーか、ミイちゃん、眠ぃのに付き合ってくれてありがとな」 キスされたら、ちょっとお酒くさい。 「ミイちゃん、やっぱあっちで一緒に寝よ」 作ってくれたベッドとトイレを寝室に運んで、 あたしは憧れの史哉さんと同じ部屋で寝ることに! …美衣じゃなくてミイだけど、ドキドキだよぉ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加