バイト先のカフェが閉店…どうしよう

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バイト先のカフェが閉店…どうしよう

「え??…ウソ…」 いつものようにカフェに出勤すると、事情により一時閉店します、の張り紙。 「どうしよう…」 へなへなと座り込んじゃった。 声優志望で上京して半年、安アパートでやっと暮らしてるのに。 ここのバイトがなかったら、家賃どころかケータイ代、どうやって払えばいいの。 やっと受けられるようになったオーディションも、会場まで交通費かかるし… 困りきってると、店長からメール。 親が倒れて急に帰ることになってごめん、数日したら一旦戻るね、って。 そういう事情ならしかたないけど…このままお店閉まることになったらどうしよう。 唯一の収入源が絶たれてしまったら、声優への道がますます遠のいてしまう。 「はーっ」 ネコをかたどった、Chat mignon の白い看板を見上げる。 可愛いネコを意味する店名の通り、カフェ店内にはガラス製品のネコのオブジェやネコの絵が飾られてて、昨日はそのオブジェを丁寧に磨いてた。 常連さんからミイちゃんって呼ばれてるオブジェは、店長が飼ってるネコにそっくり。 あたしと同じ名前だから親近感があって、時間があればオブジェのミイちゃんをキレイにしてた。 声優になるためのレッスンを受けつつバイトして、たまにオーディションを受けても、まだどこにも受かったことのないあたし。 ミイちゃんを拭きながら、ネコの鳴きまねなら得意なんだけどなぁ、って、昨日もひとりごと言ってたっけ。 お店でのことを思い出してたら、ケータイが鳴った。 店長からの電話で、親が倒れて帰省してること、取引先とのやり取りがあるから数日後には一旦戻るけど、たぶんひと月くらいは閉めることになること、迷惑料含めて多めにお給料振り込むけど、本当にごめんね、って謝られた。 そして、カフェは閉めたくないから再開したいけど、親の様子で今後どうなるかなんとも言えないから、ほかにバイト探していいよ、って。 わかりました、急なことでご心配だと思いますが、お大事になさってくださいね、って電話を切る。 多めに振り込んでもらえるのはすごくありがたいけど、ひと月もバイトしなかったら、じきに足りなくなるのは目に見えてる。 だからバイト探ししなくちゃだけど、急なオーディションでも休ませてくれるところってなかなかないし、雰囲気もコーヒーも好きだからここでバイトしてたのに…ホントどうしよう、力抜けちゃって動けない。 とりあえずアパート帰りたいのに。 どれくらいそうしてたんだろう、誰かに呼ばれる声で気がついた。 あのままカフェの前で寝ちゃったのかな。 ミイちゃん?ミイちゃんだよね、って、とっても優しい、聞き覚えのある声。 んん?あたし、頭なでられてる? しかもなんか…この呼び方、美衣、っていうあたしの名前じゃなくて、ネコのミイちゃんを呼んでる感じがする。 「ミイちゃん?こんなことでどーしたの?やば、雨降ってきた、店閉まってるし、俺んち行くか」 ええ?なに?どういうこと? 誰かわかんない人に軽々と持ち上げられたあたしは、なにかあったかい物にくるまれて、自転車の前カゴに乗せられた。 小雨の中を、グイグイと走ってく。 あたし、どうなっちゃったの?!
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