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猫は死に場所を決めている。街中で亡骸が無いのは、別の世界へ行く扉を知っているからだ。死期を悟ると、そこへ向かいあるべき場所へ魂を移す。そして来るべき時に新たに生まれるか、前世を引き継ぎ生まれ変わるかに分かれゆくのだと、ザレは猫達から聞いていた。
しかし別れは辛いもの。こう話すザレもまた、あの日は一人で泣き明かしたのだ。
「エーリカ。君はトゥマみたいに、とても優しいんだな……」
「っ……ザレ」
そんな二人を見守るように珍しく霧は晴れ、頭上にはアクアマリンの空が広がっていったーー
了
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