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あれからエーリカは、今日までずっと姿を見せないままでいた。これに、もしや何かあったのではと不安を覚えていたのだ。しかし今そこに佇むエーリカの姿に、彼はようやく一時の安堵を覚え、小さな溜息へと代えることができた。
ところが、エーリカの顔は喜ばしい結果を想像させないものであった。近寄ってみれば、泣き腫らしたであろう目が、ザレの顔から逸れていく。
彼は案ずる面持ちで、柵越しのエーリカに「久しぶりだな……母親は、無事なのか?」とぎこちなく声をかけた。
「ーー最初から、こうして伝えればよかったのにね……でも、風の強い日も多かったし難しかったかしら」
「エーリカ……?」
「ザレ。分からないの、私は……」
言い辛そうに唇を力ませる姿に、まさかと口を開く。
「そんな、もしかして……」
「違うのっ、そうじゃないわ。お母様は……」
「何だ……?」
「翌日には、嘘みたいに元気になってたの。もうずっと見てなかった笑顔を見せてくれた。それで……キノアに夢の中で会ったって言ってたの、全部きっとトゥマのおかげよ。
でも、トゥマがどこかへいなくなってしまってあれから必死に探したの!
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