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でも見つからなくて、どこにも……もしかしたら戻ってるんじゃって考えたけど、怖くてとうとう今日までーー」
ザレは一歩近づき、違うと一言。
「違うんだ。トゥマは、自分で決めただけだ」
「どういう、こと……?」
「猫は九つの命があると言っただろ。その命をどうするかを決めるのも彼ら自身に委ねられてる。九つ目の命を後に残したトゥマは……キノアは選んだんだ、自らの意志で恩返しをしようと」
「そんな……っなぜそのことをーー」
きっとこの真実を話せば躊躇するから、ザレはあのとき深くを言わなかったのだと理解したエーリカの口は静かに閉じた。
しかし、ザレの大切な友人がいなくなってしまったことに変わりはない。自分のために、犠牲にさせたと感じてしまうことは避けれなかった。
柵を掴むエーリカの顔は悲痛に歪められたままザレを見据える。
「これで、良かったの……?」
「少なくとも、トゥマは良かったと思ってるはず。俺もそうだ。
それにエーリカは言った、何もしないことは出来ないのと同じだと。トゥマは自分の出来ることをしたかった。それだけだよ」
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