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向こう一点を見つめて動かぬ姿にザレは首を傾げた。そちらに目をやるが、別段動く何かがいる様子は無いからだ。薄ら見えるのは、墓地と外の世界を結ぶ鍵付き鉄扉だけ。
しかし何かを感じたようにトゥマは少し先で、ザレをついて来させようと振り返る。
「トゥマ、どこへ行くつもりだ。はぁ、仕方ないな……」
先導するように歩むトゥマに続き、とうとう鉄格子の近くまでやってきたザレであったが、柵の間から見えたものに思わず一歩後ずさる。
蹲る若い娘の後ろ姿があったからだ。怪我をしているのか、ライトブルーのスカートから見える足首に手が被さっていた。
すると鉄扉にかかる南京錠が音を出す。トゥマが前足で弾いた音だった。これにザレは渋く眉を寄せ首を横に。
「トゥマ……だめだ。俺は外の人と関わっちゃいけない。知ってるだろ」
しかしトゥマの何かを訴える瞳は変わらずザレを見つめ続ける。
「手当てするほどのことでもないさ。だから帰ろう」
そう言って踵を返そうとしたが「だれ、もしかして墓守さんなの?」と声が聞こえ、振り向いた刹那。柵越しに赤毛の長髪を揺らす娘と視線が重なった。
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