拾われた猫と拾ったお兄さん

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「見ず知らずの、しかも男に。こんな事言われてすぐイエスって答えちゃダメでしょ。お前危機感無さすぎ。」 「お兄さんは怪しい人なの?」 「直球投げてくるなぁ、これ、俺の名刺。怪しい人じゃありません。」 名刺、って渡されたそれには 神薙探偵事務所 所長 神薙陽樹(かんなぎようじゅ) と書かれていた。 偶然なのか必然なのか運命なのか、分からなかったけど。 「名前、同じ漢字だ。」 「名前?あ。お前、名前は?」 「ハル。太陽の陽で、ハル。」 「ははっ、お揃いだな。ハル、どうする?」 「お兄さんが怪しくないの分かったから、バイトさせてください!」 そう言って立ち上がって頭を下げたら、ぽんぽんって頭撫でられて。 「お兄さんじゃなくて、陽樹。仕事の時は所長って呼んで。あとは陽樹でいいから。」 とりあえず家に案内するって言われて、電車に乗って下北沢駅?で降りて、10分位歩いたかな、綺麗なマンションに着いた。 7階の701、ここが今日からお世話になる家か! 「こっちは俺の部屋だから勝手に入るなよ。向かいのこの部屋、ハルが使っていいから。ベッドしかないけど、必要なものあれば用意するし。トイレと風呂はそこで、ここがリビング。一応、最低限のものは揃ってるから、好きに使って。」 「分かった。何から何までありがとう!何か、ルールとか無い?」 「んー。お互い、プライベートに関しては必要以上に詮索しない事。仕事は家に持ち込まない事。勝手に他人を家に入れない事。まあ、彼氏出来たら出てってもいいけど、男連れ込むなよ。俺も女は入れないから。」 「それは有り得ないから大丈夫。彼氏とかいた事ないし。」 「……は?え、ちょっと待って。ハル、お前何歳?未成年!?」 「違うよ、20歳。陽樹は?」 「27歳。去年親父が死んで事務所継いだんだ。だからこの歳で所長。因みに社員は誰もいない。ので!猫の手も借りたい位忙しかったから、ほんっと助かる!!未成年じゃなくて良かった!!」 果たして猫の手以上に役に立てるのか分からないけど、やれるだけやってみようって思った。
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