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市街戦
セントバーグの国際空港は、前日から断続的なミサイル攻撃を受けて薄い黒煙を上げていた。駅には国外に避難しようとする国民が詰めかけ、同様に、フチン共和国以外の国々へ通じる国道には、避難しようという車が列をなしていた。それらを除けば、セントバーグの街は平穏で、すれ違う市民は穏やかな足取りをしていた。
アテナはスマホのナビを頼りに市庁舎を訪ねた。多くの市民が国を守るために集まっていた。
「国防軍、参加希望ですね。戦闘訓練の経験は?」
窓口の係員は無表情だった。
「ありません。でも、健康です。力もあります」
アテナが拳を作って見せると、係員が疑うような瞳でじっと見てくる。
「昨日、家族がミサイルの犠牲になりました。私には守る家族がありません。だから、国を守りたい」
「そうでしたか。ご愁傷さまです」
係員は書類に採用のスタンプを押し、次の窓口に進むように促した。そうして配属されたのは、攻撃のための部隊ではなく、人員が10名ほどの小さな輸送部隊だった。
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