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「アテナ、よく志願してくれた。リーダーのカールだ」
巨漢の上官が握手を求めた。知的な青い瞳と握った時の厚みのある手のひらに信頼を覚えた。
「ミールから来ました」
「小さな町だったな。確か、ミサイルが落ちた……」
「はい。家族が死にました」
「そうか、残念だったな。しかし、クヨクヨしている暇はないぞ。これからは同情もしない。我々は、いつも死と隣り合わせだ」
彼の眼が、アテナの覚悟を探っていた。
「もちろん、そのつもりです」
「それにしては浮かない顔をしているな」
「最前線に行けると思っていたものですから……」
アテナは地下倉庫のコンクリートの天井に目をやった。
「最前線にも行くさ。そこに弾薬や食料、医薬品を供給するのが我々の任務だからな。陣地にこもっている兵隊より、移動している我々の方が空から目に止まりやすい。決して安全な仕事ではないぞ」
教えられ、なるほど、とアテナは納得した。
「クリス!」
彼がトラックに弾薬を積みこんでいる女性を呼び、アテナをロッカールームに連れて行くように命じた。
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