市街戦

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 クリスはその年に入隊したばかりの正規の軍人だった。身長はアテナより高かったが、身体は細く、まるでバレリーナのようだった。 「怖くない?」  軍服に着替えるアテナに向かってクリスが訊いた。 「怖い?」  アテナは首をひねった。昨日はそんな感覚があっが、今となっては乾いた記憶に過ぎない。 「そんなものは昨日忘れたわ」 「ふーん、羨ましい……」  彼女は仕事がないので軍隊に入ったが、半年近い訓練を受けても今は怖いと話した。 「これをつけて。インカムよ。通信範囲は平地で300メートル。建物内では100メートルぐらいかしら」  無線機を胸のポケットに入れてイヤフォンを装着した。  着替えをすませて倉庫に戻ると、すぐに出発すると告げられた。差し出された自動小銃の重量に驚き、思わず両手で抱えた。これが命を奪う道具なのだ。そう考えると身の引き締まる思いだ。 「すぐに出るぞ。敵が空港に下りて戦闘になっている。クリス、トラックの中で使い方を教えてやれ」  カールの指示で2人は迷彩色の軍用トラックに向かった。荷台にいた男性が手を差し伸べて引き上げてくれた。天井は、ちょうどアテナの背丈ほどの高さがあった。背の高い男性やクリスは腰をかがめて動いた。荷台の左右には人が座るためのシートがあって、通路の前半分ほどに木箱やプラスチックケースが積んであった。
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