市街戦

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 少し西に傾いた太陽の下、舗装道路を爆走するトラック。普段なら海外旅行に向かう家族やビジネスマンがワクワクしながら走る道を、荷台の4人は無言で運ばれていた。エンジン音と、徐々に近づく爆発音がいやおうなしに緊張を高めていた。それに耐えかねたクリスが口を開く。 「大統領の演説、見た?」 「いいえ」  アテナは首を左右に振った。政治家には何も期待しないことに決めていた。 「見てよ」  クリスがスマホを出した。 「おい。規則違反だぞ」  ミハイルが注意したが彼女は無視した。  スマホの中の大統領は軍服姿で疲れた顔をしていた。わずかだが無精ひげも伸びている。 『今朝、我々はひとりで国を守っている状況だ。昨日と同様、世界で最も強力な国は遠くから傍観している……』  彼は世界一の軍事国家、ライス民主共和国を名指しせずに批判していた。アテナも彼の国が介入したならフチン共和国も撤退するのではないかと思った。いかに暴君イワン大統領も、世界大戦の根源という不名誉は望まないだろう。 『……フチン共和国への経済制裁は科されたが、これだけでは外国の兵士を我々の土地から追い出すのに十分ではない。それは世界各国の団結と決意によってのみ達成できる。ユウケイ国民は抵抗を続け、真の英雄的行為を示している……』  大統領は防衛軍を鼓舞し、国民を称え、世界各国に協力を求めていた。 「これで外国は支援に回ってくれるの?」  アテナは、クリスに、そしてミハイルとブロスに向かって尋ねた。 「さあな」  ミハイルが答えた。ブロスとクリスは何も言わなかった。
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