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ジェット機が落ちたのだわ。アテナはそう考え、痛みをこらえて立ち上がった。周囲を見渡せば、美しいはずの通りは埃でかすみ、見通しが悪かった。石畳の通りはがれきに覆われ、血だらけの怪我人が横たわり、あるいは呆然と立ち尽くして助けを呼んでいる。
「大丈夫?」
彼等に声をかけても、足を止めることはなかった。頭にあるのは可愛い娘のことばかり……。
「マリア! パパ!」
愛娘と父を呼ぶ声はのどに詰まった。
2ブロック戻って初めて気づいた。ミント色の肉屋は跡形もなく、がれきの山に変貌していた。様々なものが、元の形を失っていた。
「マリア! パパ!」
父がマリアを抱き上げていた場所まで夢中で歩いた。そして、屋根瓦、レンガ、壊れた家具、肉屋の車のタイヤ……、本来の形をとどめない様々なかけらを素手でかき分けて、2人の姿を探した。
「フリンのバカ野郎……」
瓦礫を移動させながらパン屋のオーナーが泣いていた。あちらこちらで無事だった住民が遺体を捜し、怪我人を助けた。
遠くから緊急車両のサイレンの音が近づいた。
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