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「とりあえず」
アメリカのリーダーが、ジト目になって言った。
「コーストライア、アギロ、君達ひとまず休戦協定結んでくれないか?百年も戦争するなんてやりすぎ。そんなのイングランドとフランスだけでもうおなかいっぱいなんだよ、歴史繰り返さないでよ」
「「ええええええええええ」」
「えええじゃないよ、えええじゃ」
「だってアギロが!」
「だってコーストライアが!」
「君達ねぇ……」
コーストライアとアギロは、二百年ほど前に生まれた新興国である。双子のようにそっくりな国であるくせに、もうとにかく仲が悪い。そりゃもう凄まじく仲が悪い。信じている神様が違うせいで争っているのだから、正直他の原因よりもタチが悪いとしか言いようがないのだ。信仰は、そう簡単に変えられるものではないのだから。
新興国二つが言い争いを始めたことを契機に、紛争をしたり犬猿の仲である複数の国々がやいのやいのと自分の意見を言い始めた。
「最近経済成長で排気ガスがーだのなんだの言うけど!俺より隣のこいつの国の方がもっともっと大気汚染してるじゃねーか!」
「なんですって!?もう一度言ってみなさいよ、何でもかんでもわたくしのせいにしないでくださる!?」
「もう少しであの国をボッコボコにするから、それまで待っててくれないかな。そうしたら戦争終わるから」
「無茶苦茶なこと言うな侵略者!まるで戦争が長引くの僕が悪いみたいに!」
「とりあえずみんながあたし達と同じ神様を信じれば万事解決よね?」
「断固拒否!」
「そもそもこいつが公害問題で!」
「土壌汚染しまくりは誰の国だ!?」
「うわあああああんだから戦争したくないって言ったのに、攻め込まれたらこっちだって応戦するしかないじゃん!」
「経済制裁!経済制裁!経済制裁ったら制裁!!」
「とりあえず、魔法で煩い奴ら全員に隕石でもぶつければいいんじゃないのかなって思う」
「できんのお前!?」
「頑張ればできる気がする」
「マジで!?」
こんなかんじである。会議は踊る、されど進まず。やがて、彼等の間を必死で取り持とうとしていたドイツとイタリアとフランスの代表たちが、超絶げんなりした顔で日本のリーダーを振り返った。
「……こんな有様だから、とりあえず日本氏。もう一度、彼のご機嫌をうかがってきてくれないか」
「だから何で私……」
だから常任理事国でもなんでもないのに、責任を負わせないでくれ。心の底からそう思うも、ドイツにこう追撃されてしまう。
「アメリカに交渉を任せるのは嫌だってロシアと中国がごねてるんだ」
「……行ってきます」
正直、胃が痛くて仕方ない。
なんで国の代表には、残業手当も危険手当も出ないのだろうか。
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