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理想のボディーガード
「透和ー、千景ー、かーえろ」
終礼が終わり、遊乃がやって来た。
透和と千景は席が近いのだが遊乃だけが少し離れた席だった。これについて遊乃はズルイズルイと言っていた。
「そうですわね。帰りに良いボディーガードの方が見つかるといいのですが」
さすがに呆れた顔をする遊乃。
「またボディーガード? ほんと懲りないよね、透和は」
「もしかしたら帰り道に素敵なボディーガードの方に出会えるかもしれませんもの。常にアンテナを張っておくことは悪いことじゃないですわよ」
「ま、何でもいいけど早く帰るわよ」
千景はすましたように言う。
帰り道、遊乃が聞いてきた。
「ところでさ、透和の理想のボディーガードってどんなの?」
確かに二人にはボディーガードを探すとは言っていた。
しかし具体的にどういう人を探しているかという話はしていなかった。
「うーん、そうですわね。まずは年が近いということが第一条件ですね」
「ああ、それは聞いたね。年上だと嫌なの?」
「年が上すぎるのが問題なんです。それにあの黒服は目立ちすぎますわ。車で送り迎えなんてもってのほかですわよ。私はもっと、こう……。普通の高校生活を送りたいんです!」
「透和の普通って、どんなのよ?」
「まあ結局のところ、透和は特別扱いが嫌ってことなんでしょ。ボディーガードっていうのも建前なんじゃないの」
千景はクールにコーヒーを飲むのを止めて指摘する。千景のこういう鋭いところに透和はいつも感心してしまうのだ。
「全くその通りですわ! さすが千景さんですわね」
「大金持ちのお嬢様だからね、心配するのも無理ないかもだけど」
「でもさー。透和のお父さん、最初はワタシたちに対しても、何かヤバかったじゃん」
遊乃が笑いながら何かを思い出したようだ。
「ああ、そうだったわね」
透和が小さい頃、ちょっとした困り事、まあ透和にとってはあまり思い出したくない思い出も混じっているのだが、簡単にいうと迷子になっていた透和を助けてくれたのが遊乃と千景だったのだ。透和の父親は子供相手にも容赦なく警戒心をむき出しにしていた。
透和が必死に助けてくれたことを説明してもしばらく警戒は薄れなかったが、これを機にだんだん遊ぶ頻度が増えたことですっかり打ち解けるようになっていた。
「透和のお父さん、ほんと心配性だよねー。見てて面白いくらい」
「そうね。小学生のときだったかしら。透和とかくれんぼしてただけなのに、どこに行ったのかわからなくなったってすっごい大騒ぎしてたの」
「そうそう、あのお家広いからかくれんぼにはうってつけだもんね」
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