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「いきなりごめんね、誘っちゃって」 と早宮さんがペペロンチーノを食べる手を止めてそう言ってきた。 「いえ、こちらこそ、誘っていただいてありがとうございます。早宮さん、イタリアン、お好きなんですか?」 と私もクリームパスタを食べる手を止めて返すと、 「料理のジャンルは全般好きなんだけどね、ここは会社から近いし、値段も良いから、時々食べに来るんだ」 それに―、と早宮さんは付け加えた。 「一度、中松さんに食べてもらいたかったんだ、ここのパスタ。絶対気に入ってもらえるかなって思って」 ―おいしそうにホワイトモカを飲む中松さんだから、ここのパスタを食べたら、どんな顔をするのかなって思ってね― と嬉しそうに言った。 「そ、そうだったんですね…、パスタ、本当に美味しいです」 と私は恥ずかしく思いながら言った。 店内は小ぢんまりとしているが、洗練されていて、私達の他にもスーツ姿の客がパスタに舌鼓を打っていた。 「良かった、でも、あんまりこのお店のこと、他の人に話さないでね」 と、早宮さんが言ったので、不思議に思っていると、 「今のところ、僕だけしか会社の中でこのお店知らないみたいなんだ。気に入っているから、あまり知られたくない」
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