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「ごちそうさまでした、とても美味しかったです」 お店を出て、私は早宮さんにそう言った。 お会計のとき、早宮さんが自然に財布を取り出したため、自分も払うと言ったのだが、せっかくだから払わせてほしいという早宮さんの言葉に甘えた。 「こちらこそ、ありがとう。楽しかったよ」 夜風に髪をなびかせながら、早宮さんはふっと笑った。 「私も楽しかったです。では、これで」 と最寄り駅に歩き出そうとすると、 「あ、待って、」 と呼び止められた。 「家まで送っていくよ」 その言葉に、私はとても驚いた。 「え!?」 「こんな時間だし、女性を一人で帰らせるわけには行かないよ」 さらりと言う早宮さんに、私は慌てた。 「で、でも、早宮さん、明日早いのでは…」 「大丈夫だよ、それに、僕がそうしたいから」 "ね、お願い"と言われた私は頷くしかなかった。 「ごめん、その前に、一旦会社の駐車場まで車を取りに行かなくちゃいけないから、一緒に来てくれる?」 「は、はい」 今日は、色んなことがいっぺんに起こりすぎて、頭がついていけていないなと思った私だった。
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