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病院に連れていこうとしても嫌がるので、水で濡らしたタオルを渡し、自分で拭かせた。常備している薬箱から消毒液とガーゼを取り出し、手当させる。
少し歩かせたが、脚を引きずる様子もない。転んで擦りむいただけのようだ。
俺が配送予定の営業所に遅れるとメール入れるだけで「やめて~!!」と騒ぎ大変だった。
「後で病院に行くんだぞ」と念を押し、近くのファミレスに入る。
ドリンクバーで、女の子が好きそうなピーチジュースを持ってった。
「おじさん、ありがと」と、しゅんとうなだれてる。
なんだ、ちゃんと礼、言えるんだな。
「お前、何で死のうとしたんだ」
「違うよ! 悪役令嬢に転生するつもりだったんだ」
俺の趣味ではないが、深夜アニメでやってるあれか?
「トラックにひかれると、悪役令嬢に転生できるんだ。最初、王子さまから婚約破棄されるけど、前世の記憶でスキル発動し、王子さまもヒロインもざまぁして、隣の帝国のお妃になるんだ」
あー、えーと、そのー、なんだ……
「それはアニメの話だろ?」
「アニメじゃないよ。私、アニメ化されるとイメージ崩れるから、見ないんだ」
そーいう問題じゃない。
「中学生なら、現実とマンガの区別つくだろ」
「中学じゃないよ。高校だよ」
一部のマニアはJCとJKの違いを熱心に語りJCの方が人気あるが、俺からすれば区別つかない。
俺はロリコン趣味じゃない。高校生なら三年生、十八歳以上の方が犯罪にならないから……違うか。
「でもさ、親は毒親で、クラスじゃカースト底辺だし……じゃあ、転生悪役令嬢狙うっての、アリだよね」
「毒親?」
「昔は母親、優しかったんだけど、私が中学受験失敗してから、口、聞いてくれない」
それは間違いなく毒親だ。
「今の学校もランク微妙なのに、私、勉強もスポーツもゲームもコミュ力もいまいちで、趣味もないし、それにマジブスだし」
ブスとは思わんが、後はフォローしようがない。
こんなとき、気の効いたことを俺は言えない。
再度、営業所に遅れるとメールし、女子高生を家まで送ることにした。
「やだよ。おじさんとこに置いて。私、何でもするから」
おお! ついに役得展開か!
が、このまま連れて帰るのは犯罪だ。
「俺に必要なのは、女子高生じゃない。パソコンや経理できる大人だ」
台詞だけならイケメンだ。
「おじさんって、JKとやりたいんじゃないの?」
役得展開すぎる。
「お前、悪役令嬢に転生して、お妃さまになりたいんだろ?」
「悪役令嬢じゃなくても、モブでもいいよ」
「でも、せっかく転生しても、前世で好きでもない親父とやったら、スキル発動できないんじゃないか?」
お、女子高生、ちょっと、俺を尊敬の目で見てない?
「現世で目一杯スキル高めて百歳まで生きて、それから転生した方が最強じゃねえ?」
「やだよぉ、ばばあになるまで生きたくないよぉ」
お前。
勉強やスポーツは知らないが、笑うと、メチャクチャかわいいぞ。
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