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目を覚ますと見慣れぬ天井を見上げていた。
「…ここは……」
小さく呟く少女に応える者はいなかった。
ぼんやりとする頭をフルフルと回し、体を起こすとどこか懐かしい田舎のような風景が目に映った。
「目が覚めましたか?」
廊下から栗色の髪の少女が現れた。
どこか幼さを残す顔立ちであったが雰囲気は静かで柔らかく、微笑む彼女を見てどこか心が安らいだ。
「ここは川平かお…コホン…川平宗家様の屋敷です。あなたは3日前の雨の中、町中で倒れていたんですよ」
なぜか一度ごまかしていたが、布団の隣に座り静かに話かけてくれた。
「自己紹介がまだでしたね。私は犬神のなでしこです。以後お見知りおきを」
“犬神”という言葉が気になったがそれよりも右手の薬指にはめられている指輪が気にかかった。
「あなたは…川平宗家とはどういう関係なの…」
「宗家様は私のご主人様です」
頬をやや赤くしながら微笑む彼女を見て、
「日本では…夫のことをご主人様と言うのね…なんだか変な感じ…」
「お、夫!?ち、違います!私と薫様はそういう関係ではありません!」
顔を真っ赤にして否定する彼女を見て、内心おもしろがっていた。
だから少女は最後に一言だけ、
「そう、それならそういうことにしておいてあげるわ…」
小馬鹿にしたような口調になでしこは怒ることはなかったがただただ顔を真っ赤にして俯いていた。そんななでしこを見てクスクス笑いながらも遅くなった挨拶をした。
「私はリリス。…よろしくお願いするわ、犬神のなでしこ」
顔を真っ赤にするなでしこにリリスは微笑んだ。
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