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窓から差し込む柔らかな日差しが、銀と黒の混じった髪に当たり、いつもとはまた違った印象を受けさせた。
この髪は彼がいた世界──死神の世界では、生前の大罪の証として忌み嫌われていたこともあり、繊細な彼の心を傷つけてしまう要因の一つとなってしまっていた。
それともう一つ。彼と出会う前の話なのだが、本人から口を開くことがないので、知らないままであった。
それが何なのかは分からないが、毎晩悪夢となり、彼を苦しめ、明け方になってようやっと寝れる程度を毎日繰り返していた。
今日もそうで、そろそろ起こさねばならない時間。少しぐらいしか寝れてないが、仕方ない。
「クロサキさん、朝ですよ」
肩を軽く叩くと、薄らと目を開けた。
あともう少しで紅い瞳が見れると期待した眼差しで見ていたが、やはりまだ眠いらしく、再び目を閉じてしまった。
このまま寝かせておいてもいいのだが、前にそうしてみたら、しばらくの間、布団に丸まり、口を引き結んだまま何も喋らなくなってしまったのだ。
不貞腐れたのか、置いてかれて寂しいと思ったのか。
なかなかに子供っぽい性格だが、それが段々と可愛らしくも思え、今度からはそうしないようにと思っていても、してしまいそうになってはいた。
そうしたら、人間不信の彼に不信感を抱かれてしまうが。
「クロサキさーん? 起きてください。ご飯食べましょう」
何度か呼びかけ、揺すってみるものの、目を固く閉じたままでなかなか起きようとしない。
困った。
いつもそうだが、今日は特に起きる気配が無さそうだ。
その時、仕事先の客に教わった方法を思い出し、早速やってみることにした。
さらっとした前髪を払い、額が晒さられた箇所に自身の唇で触れた。
こうするとすぐに起きてくれるおまじないだと言うらしいが。
と、唇を離した直後、すぐに目を開いた。
効果があった。
密かにシロアンは喜び、教えてくれた客に感謝をした。
「クロサキさん、おはよ──·····っ」
目を見開いた。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
起き上がった彼があろうことか抱擁してきたのだ。
いつもならば、目を開けることすら億劫そうだし、開けたとしてもしばらくぼぅっとしている彼が。
何が何だかよく分からない。
「ど、うしたのです、クロサキさん」
「··········なんでも、ない」
しばらく固まっていたシロアンは、ようやく開けた口で言葉をつっかえながらも紡いだ直後、クロサキはぱっと離れ、さっさとベッドから降り、部屋を出ようとする。
一連の行動に首を傾げつつも、「待ってください」と慌てて彼の後を追った。
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