2人が本棚に入れています
本棚に追加
シロアンが先に食べ、しばらくした後ようやく食べ終わったクロサキがすぐに立ち上がり、食器を洗おうとするのを、「クロサキさん、いいですよ。私が洗いますから」と言って、泡立てているスポンジと皿を手に取った時、「·····だが」と呟くように言った。
「ただ食べているだけで、しかも食べるのが遅い上に何もしないのは·····」
「いいのですよ。作った料理を残さず食べてくださるだけでも充分にしてくれてますから」
「·····そう」
「洗っている間、出かける準備をしておいてください。クロサキさんのここ、跳ねてますよ」
「·····っ」
タオルで拭いた指先で前髪辺りを摘んで小さく笑うと、微妙に目を見開いたかのような表情をし、「分かった」と言って、そそくさと洗面所に向かう彼の後ろ姿を見て、「素直な人」と微笑んだ。
毎回似たような会話はする。シロアン自身は特に気にもしてないが、クロサキはきっとどの誰よりも食べる時間がどうしても長くなってしまう。食べることが不慣れなのか、食べることに対してかなり慎重に、細心の注意を払って、一口ずつ丁寧に食べる。
彼の食べる姿を見るのがとても好きではあるが、どことなく食べることに神経を使っていて、疲れているように見える。
寝足りないせいもあって、すぐに疲れるのだろうと思うが、それよりももっと違うような。
それが何なのか分からなく、得体の知れない気持ち悪さを覚える。
皿を洗い終えそうな頃に戻ってきたらしい彼の気配を感じ、「あともう少しで終わりますからね」と言って、洗い終えたシロアンは、「私も準備してきますから、もう少し待ってください」と言い残して、準備にとりかかり、終えたシロアンは「さあ、行きましょう」と言って、クロサキと共にシロアンの仕事場に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!