罰ゲームでクラス一の陰キャに告白して付き合う話

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 「やっほー、加藤くん。どしたのこんな夜中に。何?オレの声聞かないと、眠れないって?」  その場をなごまそうとしてジョークで言ったつもりだったが、受話器から聞こえてきたのはあからさまに不機嫌そうな加藤くんの声だった。まぁ、ウザがられるかなぁと思わないでもなかったさ。しかし声だけの会話だと、本当女の子にしか聞こえないなぁ…。  「また、そんな事ばかり言って。『土曜日は一日練習やらでバタバタするから、日曜日にゆっくり会ってデートしよう』とか言ったのはあなたでしょう。未だに、何時にどこに行くのかも知らないんですけど。予定、決まってるんです?」  「あぁそっか、デートねデート。いや忘れてた訳じゃないから。楽しみにしてるよマジに。加藤くんは、どっか行きたい所とかあるの?」  「行きたい所ですか、いえ別に…。カラオケは、あなたが部活の練習してる間にちょいちょい行ってますから。多分、土曜日にも入り浸ってます…。と言うか、前にも言いましたけど。ボクには、付き合うと言う事が何なのか自体もよく分かっていません。その…世間一般の人が、デートでどこへ行くかとかも。その辺りは、あなたの方がお詳しいのではないですか。だから、あなたが決めてください」  「マジか。じゃあ、珍宝館行こうぜ珍宝館!前々から、気になってたんだ。そこで館長の壮絶な下ネタトーク聞いて、微妙な空気のまま伊香保温泉で一泊しようぜ!個室露天風呂つきの部屋な!そこで、心も身体もしっぽりと…」  「わー!わー!世間一般の人って言ったでしょ!?何ですか、その新婚夫婦みたいな。春ですし、桜の花でも見ればいいのでは?」  「何だ、やりたい事あるんじゃん。オッケー、桜な!名付けて、『桜を見る会』ッ!前橋公園で、花見しよーぜ。個室露天風呂は、またいつかの機会にって事で」  「その命名は、いかがなものでしょう…。あと思ったんですが、個室露天風呂に泊まれるくらいのお金あるんです?いや、あったとしても泊まりませんけど」  「うぅ、それなぁ。親から小遣い多めにもらってるから、カラオケ行くくらいは困らんけど。バッシュ買ったりとか、色々と出費が多くてなぁ。夏休みになったら、バイトせにゃあかんか…」  「うちの学校、バイト禁止ですから…。それじゃ日曜日、楽しみにしてますよ。お休みなさい」    そう言って、加藤くんは電話を切った。色々言ってたが、何だかんだデートを楽しみにしてくれてるんだ。オレも、日曜日がまちどおしくなってきたなぁ…。  そして、寝る前に加藤くんの声が聞けて良かった。へへへ。  
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