罰ゲームでクラス一の陰キャに告白して付き合う話

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 みなさん初めまして。…と言えるほど、落ち着いた状況ではありません。なぜなら、ボクは今夢を見ているからです。  夢の中で夢を認識する。いわゆる一つの、明晰夢と言うやつでしょう。そして、どんな夢であるかも分かっています。幾度となく、見てきた状況ですから。  中学生のボクは、電車の中で痴漢をされています。そして、ボクはそんなボクを一人の乗客として冷めた目で見ています。それだけです。初めの頃こそ嫌悪感が湧き上がったものですが、今では特に何も感じません。なぜなら、何度も見せられて夢の結末はとっくに理解しているからです。  そろそろですね。ほら、背後から伸びた手が痴漢の腕を掴みました。そのまま駅員の所にでも連れて行きたかったのでしょうが、痴漢は彼の手を振り払いちょうど停車した駅で飛び降りて逃げて行きました。  彼は舌打ちして悔しがりましたけど、十分です。あなたはこの下らない夢に終止符を打ってくれる、ボクの救世主なのですから。最後にひと目、彼の顔を見ると…。なんと、ボクを助けてくれた彼の顔がレオ君のものになっていました。  おや、この展開は新しいな…。そこまで考えた時点で、夢から醒めました。  改めて、みなさん初めまして。おはようございます。加藤仁成16歳です。「じんせい」でも「ひとなり」でも、どちらで呼んで頂いても結構です。  朝は苦手ですが、いい加減目を覚まして準備しないと。なぜなら今日は、レオ君との初デートですので。レオ君と言えば…。  …先ほどの夢を思い起こしていました。あれにはどんな意味が…って、考えるまでもないでしょうか。新学期で初めて会ってそんなに日も経っていませんが、人の心にグイグイ土足で踏み込んできます。だけど、それが嫌な訳では決してなくて…。  この辺にしておきましょう。やっぱり、話すのは苦手です。次の頁から、「独白」は他の方にお任せしますね。  …あとさっきの夢、ボクを触っていた痴漢の顔もやはり同じくレオ君だったような…。これもまた、深く考えるのはやめておきましょう。
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