罰ゲームでクラス一の陰キャに告白して付き合う話

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 公園をひとしきり回ってから、トイレに入った。加藤くんは付いてこなかった。携帯ショップで借りて以来、トイレ行ってないけど大丈夫なのかな…。  そういや、学校でトイレとかどうしてんだろう。何となく、毎回個室に入る系男子な気がする。むしろ、お昼も個室でぼっち飯とかしてねーだろうな…?同じクラスなのに、まるで印象に残ってないわ。今度、誘って一緒にお昼食うか…。  そんな事を考えながら、加藤くんの許に戻ると…。目の前で、漫画かドラマみてーな光景が繰り広げられていた。サラリーマンと思われる酔っ払い二人が、加藤くんに絡んでいたのだ。おそらくは、見た目と声から女の子だとでも思われたのだろう。遠くで聞き取れないが、「ぐへへ。お姉ちゃん、こっち来て一緒に酒飲もうぜ」的な事を言っているようだ…。って、落ち着いて見ている場合じゃねーよ!  「て…。てめーら、何してんだコラ!人の彼女に、手ぇ出してんじゃねーよ!」  自分の人生で、こんな洋画の主人公みてーな台詞を言う機会があるとは。我ながらガタイがある方なので、怖気づいた二人は大人しくスゴスゴと逃げて行った。去り際に、「ケッ。男二人で、よろしくやってろや。ホモが!」的な捨て台詞を吐いて…。  えぇと。つまり、加藤くんが男だと認識した上で絡んでたって事?てめーらだけには、ホモとか言われたくねぇわ…。って、それよりも今は加藤くんだ!可哀想に、脅えて小さくなっている…。小さいのは、いつもの事だけどさ。  「か…加藤くん。大丈夫?気分悪い?やっぱり、今からでもトイレ行く?…いや。それより、警備員室的な所で休ませてもらえるかな?加藤くんに何かあったら、オレ…」  「…大丈夫です。さっきみたいな事も、初めてではありませんから。…あの。それよりも、離れて頂けませんか。周りの視線があるのと…。今日、気温が高くて暑苦しいんですよ。あなた、ただでさえ体温高いんですから」  気が付けば、いつの間にか彼を抱きしめていたらしい…。言われてみれば、確かに周りの視線を感じる。気のせいか、拍手と口笛を鳴らしている連中もいるような…?慌てて、彼の身体から身を離す。…今、「初めてじゃない」とか何とか言った?とても気になるけど、こんな状況で軽々しく聞くべきではないだろう。  「ご…ごめんな。それより、どうするよこれから。公園も一周回ったし、すげー微妙な空気になっちまったな。ちょっと早いけど、今日はこれで解散する?」  オレがそう聞くと、加藤くんは意を決したように言った。  「ちょっと行きたい所があるんですけど、今から付き合って頂けませんか…。なに。ここから、そうは離れていません」
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