罰ゲームでクラス一の陰キャに告白して付き合う話

19/22
前へ
/22ページ
次へ
 そうして彼に連れて来られたのは、とある市民体育館だった。ってか、ここならバスケの試合で何度となく利用した事があるわ。すげーどうでもいい話だが、加藤くんはここでやっとトイレ(多分個室)に行っていた。  「お待たせしました。お見せしたい所は、こちらです」  そうして、さらに彼に連れてこられたのは…弓道場?体育館に着いた時から思っていたが、何となく彼に似つかわしくないなぁ。どうやら一日弓道の試合を催していて、今は大学生の部らしい。あっこれ、アニメの「ツ○ネ」で見た光景だ!  一言も応援の声を掛けていた訳ではないが(そもそも、本来は掛け声NGなんだってね)、彼を見ていればどの選手をどのような気持ちで見ているかよく分かる。だって、まるで恋する乙女みてーな表情(見えないけど)で見守ってるもん。…と考えているオレの気持ちを、今度は反対に加藤くんの方から察されたようだ。  「何ですか。別に、そう言う気持ちで見ている訳ではありませんから。言ったでしょう、お世話になった先輩ですよ」  「あぁ、LIMEの承認待ちしてたとか言う?」  「えぇ。先ほど返信が来まして、たまたまこちらで試合をしている事を知った次第です…。この際だから、全部言っちゃいますね。公園で、『こんな事は初めてじゃない』って言ったでしょう。ボク、中学の時に通学電車の中で痴漢されました。それを助けてくれたのが、当時高校生だった彼です。それだけです」  「痴漢だと!?何てうらやま…じゃなくて、許せねぇ。オレがその場にいたら、そんなふざけた真似はさせなかったものを…!」  「最大限、言葉を選びましたね。いいですよ別に。中ニの時だったので、あなた確かロサンゼルスに行ってらしたでしょう。その事がきっかけで、電車がトラウマになったとかもないですから…。たまに、満員電車が億劫ですけどね。高校は別の共学に通ってらしたんですけど、電話やらSMSで連絡を取り合っていました。さっさとスマホに変えて、LIMEでやり取りすべきだったかなぁ…。と、先ほど思っていた次第です」  「加藤くん…。あ、あのさぁ。話変わるけど、明日から待ち合わせて同じ電車に乗らねぇ?いや、痴漢が心配とかじゃなくて…。それもあるけど、何となく一緒に登校したいなぁ。って、そう思ったんだ。朝練あるから、めっちゃ早く来てもらう事になるんだけどさ」  「いいですよ、同じ路線ですし。それに元々、満員電車を避けるために早く登校してましたから。億劫な電車通学も、あなたと一緒ならきっと楽しいです…。帰りは多分先に帰って、例のカラオケに入り浸ってますけど」  「お…おぅ。じゃあ練習終わったら、ソッコー駆け付けるから!それじゃ、明日からって事で。へへへ、楽しみだな!」  「あ。痴漢プレイは、させませんから」  「ぐっ。オレの言いたい事が、何故分かった…?加藤くんって、やっぱりエスパー?」  「分からいでか」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加