散った桜に咲いた恋

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「ごめん。俺、真弓(まゆみ)のこと“そういうふうに”見れない」  彼の一言で、この恋の全てが終わった。  風に吹かれて舞い散る、溶けたイチゴアイスみたいな色の花びらが、彼の肩にそっと落ちるのを黙って見つめていた。  どこからともなく聞こえてくるピアノの旋律は、仰げば尊し。  二人しかいない体育館脇の倉庫前を、余計虚しくさせてゆく。  中学一年の時からずっと片思いしていたユウくん。  三年間同じクラスで話す接点はたくさんあったけれど、結局仲の良い友達以上にはなれずに、ついには卒業式を迎えた。  ずっと言いたくて言えなかった気持ち。  今日やっと、伝えることができたのに。  咲いたばかりの桜が呆気なく風に舞うように、恋とはこんなにも無情で残酷なものなのだと、生まれて初めて思い知った。 「……わかった」  今にも溢れそうな涙を、気力で体内に引っ込める。  声にならない言葉と共に何度も唾を呑み込みながら、二度とこんなに近くで見ることのできない彼を目に焼きつけた。  少しつり目だけど、笑うと優しく下がる目尻も、日に当たると少しだけ緑に見える綺麗な黒髪も、下唇のところの小さなホクロも。  全部全部、胸が締めつけられる程好きだった。
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