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卒業
首が飛ぶ。そこに鮮血の花が咲く。それを見る少女が1人。片手には血の滴る肉切り包丁。誰が見ても異様な光景であった。
少女は思案する。次は誰を殺そうか、いや、次はどんな人間を殺そうか、と。
警官がやってくる。しかし、この場において権力は意味をなさない。現代社会にはあり得ない、ただただ、唯一力だけが支配する空間があるばかりである。
刹那。警官の首が飛ぶ。もはや、警官にはいつ少女が動き始めたのか、どうやって間合いを詰めたのかはわからない。ただ、そこには人が2人死んだ、という事実が残るばかりである。
裏路地から少女は出てくる。それはそれは見事な銀髪を持つ少女であった。顔も美しく、写真を月に数枚撮らせるだけで生きていくには不十分しないであろうくらいには整った容姿である。
しかし、片手に異様なものが一つ、血の滴る肉切り包丁は未だに血を求めているかのようだった。
少女は思案する。こんなにも殺してみたい人間がいっぱいいたことはない、と。
刹那。誰かの首が飛ぶ。鮮血の花が咲く。死んだことすらも知覚できないまま、死んでいく。それはさながら、酒池肉林ならぬ、血池首山のようであった。少女は血を持って池となし、首をもって山とした。人々は逃げ惑い、その間にも、少しずつ死んでいく。死人の共通点は、首がないことと、口がないことだけであった。
警官から、弾丸が飛んでくる。しかし、少女に当たりはしない。刹那。発砲した警官が倒れる。空から頭が降ってくる。少女は手から拳銃を取り上げ、試しに一発、もう一発と他の警官の頭に打ち込む。だが、少女はお気に召さなかったようで、すでに生き絶えた警官の首を飛ばした。
少女は歩く。鮮血に染まった広場を後に。そこで少女は見つけた。卒業式と書かれ、紙の花が散りばめられた板を。少女は入っていく。しかし、誰の止めるものはいない。物言わぬ首のない骸がただ一つ、門に寄りかかるだけである。
少女は思案する。この幸せな空間をぶち壊しにしたらどんなに気分がいいかと。
刹那。少年の首が飛ぶ。飛ぶ飛ぶ飛ぶ。鮮血が舞い上がる。乱入すら想定外であった人々はまるで狩られる側の草食動物のように逃げ惑う。しかし、それを狩る側の肉食動物が逃すはずもない。程なくして、その場は鮮血と屍と少女だけが存在する空間となった。親も子も、父も母も、先生も生徒も、大人も子供も、皆一応に等しく、その首は無くなっていた。その顔は絶望そのものであり、皆一応に歪んでいた。少女も笑顔が歪んでいた
少女は歓喜する。幸せな空間をぶち壊しにし、私色の絶望で染め上げるのはこんなにも楽しいものなのかと。
少女は思案する。まだ幸せな空間は残っているかと。
少女は歩く。血の足跡と、影と、亡霊を背中に歩く。次の場所へと。
そして、ただ一つ、この少女に言えることは、その壊れた思考と、捻り切れた精神と、人とは到底思えない肉体を持つ、人間を卒業した何かということだけである。
今日も少女はどこかで歩く。その後ろに、血の足跡と、影と、亡霊を連れながら。
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