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「あの~」
振り返ると、スーツ姿の男が立っている。
「はい?」
「あっちで、男三人で飲んでいるんですが、 一緒にどうですか?」
一見二十代のようだが、どこか仕草がオッサン臭い。それにしてもずいぶん酔っぱらっている。男の指す「あっち」を見ると、同じようにスーツを着た男が二人、こちらをチラチラと見ている。
要するにサラリーマンの酔っぱらいによるナンパである。今日はついてない日だ。
『男は回転寿司の皿のようなものだ』
と先週読んだ雑誌に書いてあって、なるほどと思ったのだが、ナンパとはいえ、もう少し良い皿が廻ってきても良さそうなものだ。
キッと睨んで追い返そう、と思ったが、
ふと二人を見て、
「どうする?」と訊いてみた。
すると意外にも、二人はあっさり、
「いいよ」と答えた。
要するに、私たちにはもう話題が無かったのだ。
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