今日の終わり、恋の始まり

4/7
前へ
/7ページ
次へ
「あの~」 振り返ると、スーツ姿の男が立っている。 「はい?」 「あっちで、男三人で飲んでいるんですが、 一緒にどうですか?」 一見二十代のようだが、どこか仕草がオッサン臭い。それにしてもずいぶん酔っぱらっている。男の指す「あっち」を見ると、同じようにスーツを着た男が二人、こちらをチラチラと見ている。 要するにサラリーマンの酔っぱらいによるナンパである。今日はついてない日だ。 『男は回転寿司の皿のようなものだ』 と先週読んだ雑誌に書いてあって、なるほどと思ったのだが、ナンパとはいえ、もう少し良い皿が廻ってきても良さそうなものだ。 キッと睨んで追い返そう、と思ったが、 ふと二人を見て、 「どうする?」と訊いてみた。 すると意外にも、二人はあっさり、 「いいよ」と答えた。 要するに、私たちにはもう話題が無かったのだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加