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☆
「へぇ、三人とも高校の同級生なんだ。いいね」
まあね、と適当に返事をする。大して仲が良くないことは言う必要がない。
それにしても良く喋る男たちだ。三人は広告代理店の営業だという。
「知ってる?広告代理店」
対面に座った望月という男が、バカにしたように言うのでカチンときた。
「もしかしてバカにしてる?」
「バカにしてないよ。知ってるかなと思って」「知ってるよ。広告代理店」
と言ったものの、どんな職業かはピンとこない。
ドラマに出てくる広告代理店といえば、だだっ広いオシャレなビルで、何だか金回りの良さそうなプロジェクト的な仕事をしている。
「でも静岡にもあるんだね、そういう会社」
そう言うと、望月がちょっと驚いた顔をした。
まんざら悪い答えでもなかったようだ。
「まあ、地方の代理店だから、仕事は地味だけどね」
「ふーん」
「……」
望月は急に黙り込んだ。
私は氷の溶けた梅酒を飲み干した。
「どういう仕事が地味で、どういう仕事が派手か、わからないけどさ」
「うん」
「私の仕事の方が絶対地味だね、それと比べたらどんな仕事も派手だよ」
「どんな仕事?」
「ウェイトレス」
「ウェイトレスっていってもね」
隣の時子が、結構大きいレストラン・チェーンの正社員なんだと補足する。
「社員って云っても、ウェイトレスだもん」
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