今日の終わり、恋の始まり

5/7
前へ
/7ページ
次へ
☆ 「へぇ、三人とも高校の同級生なんだ。いいね」 まあね、と適当に返事をする。大して仲が良くないことは言う必要がない。 それにしても良く喋る男たちだ。三人は広告代理店の営業だという。 「知ってる?広告代理店」 対面に座った望月という男が、バカにしたように言うのでカチンときた。 「もしかしてバカにしてる?」 「バカにしてないよ。知ってるかなと思って」「知ってるよ。広告代理店」 と言ったものの、どんな職業かはピンとこない。 ドラマに出てくる広告代理店といえば、だだっ広いオシャレなビルで、何だか金回りの良さそうなプロジェクト的な仕事をしている。 「でも静岡にもあるんだね、そういう会社」 そう言うと、望月がちょっと驚いた顔をした。 まんざら悪い答えでもなかったようだ。 「まあ、地方の代理店だから、仕事は地味だけどね」 「ふーん」 「……」 望月は急に黙り込んだ。 私は氷の溶けた梅酒を飲み干した。 「どういう仕事が地味で、どういう仕事が派手か、わからないけどさ」 「うん」 「私の仕事の方が絶対地味だね、それと比べたらどんな仕事も派手だよ」 「どんな仕事?」 「ウェイトレス」 「ウェイトレスっていってもね」 隣の時子が、結構大きいレストラン・チェーンの正社員なんだと補足する。 「社員って云っても、ウェイトレスだもん」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加