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☆
パルコの裏手、歩道のライトが妙に綺麗に見える。
「遅くなっちゃったな」
「カラオケが盛り上がっちゃったからね」
「もうバスもないし、南口からタクシーにしようか」「うん」
私は、さっきは言い過ぎたなと、どこかで謝りたかったのだが、中々言うタイミングがなかった。
苛ついていたのは望月のせいじゃなかった。私の問題なのだ。
ふと横にいる望月を見ると、さっきは気づかなかった。横顔のアゴのラインが綺麗だ。
街路灯に照らされて、白くくっきりと見える。
望月が言った。
「もう少しだけ、飲みたいんだよね」
国道一号の交差点に差し掛かる。
「コクイチ過ぎたら、店、無いよ」
「そうなんだよな。どうするかな」
「ねえ」
「うん?」
「一緒にいたいなら、そう言わないと分からないよ」
口に出すと、何かとても軽い女みたいに聞こえる。
望月は、驚いた顔をして止まっている。
こんなものは、恋じゃないのかもしれない。
いや、
こんな恋も、あるのかもしれない。
こんな恋も、あるのかもしれない。
☆
《END》
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