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エピソード4
「永の務め、ご苦労だったな……」
渡し守だった和行と、彼が五十年待った恋人の聡子を見送った、黒髪に金色の目の男性に声を掛ける存在があった。
男性が振り向くと、大人になりかけるくらいの年齢の少年が立っていた。
「新しい渡し守になりたいと望むか」
言いながら、男性の身体は崩れるように縮み、そこに猫が現れた。丸い金色の目が、射貫くように少年を見据えていた。
「僕、見てました。
別れたくなかった人を、ここで待てるんですよね」
「ああ。
だが、いつまで役目を務めることになるかは分からない。それに耐えられるのか?」
答えの分かっている問いに、少年はきっぱりと頷いた。
「はい。いつか必ず会えるんですから、待てます」
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