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猫が目を細めて返してきた。
「自分の親を迎えて見送る役目も担うことになるぞ?
そして、待ち望む者が、別の存在と人生を送るかもしれない。そうなっていても受け入れると言えるか?」
思わない質問だったようで、少年はとまどうように黙ったが、唇を噛みしめながら、猫の言葉に頷いてきた。
反応を確かめるように見つめていた猫が、喉を鳴らした。その音は、満足そうな響きを帯びていた。
「分かった。そこまでの決心なら大丈夫だろう。
務めるがいい」
猫が言うと、少年の服装が変わった。制服姿から渡し守の装束へと。
「急いで岸に向かうぞ。
彼らは待ってくれないからな」
頷く少年の肩に乗った猫が、新しい渡し守の誕生を知らせるように、ひと声鳴くと、大地は一瞬震え、そして平静を取り戻した。
それは、大地が新しい渡し守を認めた証だった。
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