エピソード1

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 「あ、おい。何するんだ。そこに戻せ!  おい、聞いてんのか!」  いつの間にか舟に乗っていた男の姿が遠ざかっていく。一人乗りの舟が、数艘(すうそう)、河に浮かんでいる。  向こう岸が見えないくらい広い水の流れの中に、一艘(いっそう)、また一艘と舟が増えていく。  「こちらも暇ではありません。  言いたいことがあるのでしたら、向こうでいくらでも(おっしゃ)ってください」  大きな声でないのに、遠ざかっていく男にも聞こえたようだ。  「……さっさと帰……」  男の声は段々と小さくなって、まったく聞こえなくなった。  どんな方法か分からないけど、男を舟に乗せた人が、女性たちを見て静かに声を掛けてきた。
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