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「あ、おい。何するんだ。そこに戻せ!
おい、聞いてんのか!」
いつの間にか舟に乗っていた男の姿が遠ざかっていく。一人乗りの舟が、数艘、河に浮かんでいる。
向こう岸が見えないくらい広い水の流れの中に、一艘、また一艘と舟が増えていく。
「こちらも暇ではありません。
言いたいことがあるのでしたら、向こうでいくらでも仰ってください」
大きな声でないのに、遠ざかっていく男にも聞こえたようだ。
「……さっさと帰……」
男の声は段々と小さくなって、まったく聞こえなくなった。
どんな方法か分からないけど、男を舟に乗せた人が、女性たちを見て静かに声を掛けてきた。
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