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「こちらに来てください。舟が待ってますから」
ほとんどの人が黙って従う。年配の男女が多い。その中で、女性は目立っていた。一人だけ飛び抜けて若いのだ。
女性がとまどう間に、一緒にいた人たちはいなくなって、彼女だけになっていた。
「何も心配いりません。貴女なら、向こうでも問題なく通れるでしょう」
「あ、あの……ここはいったい……」
困惑の声の女性と変わらないくらいに見える男性は微笑んだ。
「驚かれるのも当然。貴女のような方は珍しくないですから。
でも、大丈夫です。向こうは貴女を待っていらっしゃいます」
「私を?
いったい誰なんです?」
(知らない場所なんだから、知ってる人なんて、いるわけないのに……)
女性の心を読んだように、男性は静かに答えてきた。
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