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「ここは不帰の河。
私は、この河の渡し守です」
「不帰の……嘘でしょ?」
女性は、祖母が大好きで頻繁に遊びに行っていた。孫を可愛がってくれた祖母は女性に、いくつかの古い言い伝えを話して聞かせてきた。
面白い物語だと思った女性は、今でも憶えている。
その中に出てきた、不帰の河……それは。
「私……死んだの?」
茫然と言う女性に、渡し守は痛ましそうに頷いた。
「はい。多重衝突事故がございまして、数名の犠牲者が出てしまいました。
貴女は、タクシー移動中に巻き込まれたんです」
「嘘!
嘘よね。だって、私、そんな記憶ない!」
渡し守の言葉を信じたくない女性は、必死に記憶を思い出そうとした。
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