エピソード1

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 「ここは不帰(かえらず)の河。  私は、この河の渡し守です」  「不帰の……嘘でしょ?」  女性は、祖母が大好きで頻繁(ひんぱん)に遊びに行っていた。孫を可愛がってくれた祖母は女性に、いくつかの古い言い伝えを話して聞かせてきた。  面白い物語だと思った女性は、今でも(おぼ)えている。  その中に出てきた、不帰の河……それは。  「私……死んだの?」  茫然(ぼうぜん)と言う女性に、渡し守は痛ましそうに(うなづ)いた。  「はい。多重衝突事故がございまして、数名の犠牲者が出てしまいました。  貴女は、タクシー移動中に巻き込まれたんです」  「嘘!  嘘よね。だって、私、そんな記憶ない!」  渡し守の言葉を信じたくない女性は、必死に記憶を思い出そうとした。
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