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必死に記憶を探った女性は、そこまでは思い出せた。でも、そこから先がどうしても浮かんでこない。
もちろん、衝突したという記憶もなかった。
「記憶がなくても、貴女はここにいます。
ここが普通の場所でないのは分かりますよね」
女性は絶望的な気持ちで頷いた。
太陽も雲も何もない、赤い空。建物がまったく見えない広い大地も、赤く染まっている。
そして、流れも分からないほどの広い河……
日本ではないし、世界中でもこんな場所があると、女性は聞いたことがない。
「どうして、こんなことに……」
後悔に似た思いが浮かぶ。
(寝坊したのが悪かったの?
連絡してから、普段どおりに鉄道に乗れば良かったの?
それとも、諦めて有休を取るべきだったの?)
変えられないと分かっても、女性は思わずにはいられなかった。
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