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「ええ。行けば分かります。
貴女は善行(良い行い)が多いですから、きっと認められるでしょう」
女性にはよく分からないけど、悪いよりはいいと思った。
「さぁ、舟に乗ってください。黙っていても向こう岸に着きますから」
見ていたから分かる。全員、何もしないで乗るだけだったのに、舟は静かに移動していた。
「貴女に幸いを」
皮肉な言葉と女性は感じた。今さら幸せになっても意味がないからだ。でも、少し嬉しいと表情が緩んだ。
「ありがとう。さよなら、お兄さん、猫ちゃん」
手を振ると、彼の肩に乗っていた猫が、女性に向かって鳴いた。
その鳴き声を聞くと、女性の心に微かに残っていた恨みの感情が消えていった。
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