『ロシアンルーレット』

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国鉄に勤めていた玉造さんは、人事異動で、少し離れた駅で駅員として勤めることになった。 先輩がこんなことを言う。 『ちぇっついてねえ、死神が乗っている電車かよ』 布施という先輩だが、口が悪く素行も悪い。 ただし、上司にはゴマをするという嫌な奴だった。 特に後輩に対しては、ひどかった。 そんな先輩がめずらしくおびえているので、 『どうしたんです?先輩らしくもない』 そう言うと、先輩は自分の運転する電車のことだと説明する。 幸い、その日は、事故もなく問題なく進んだそうだが、 先輩が友人に聞いた話によると、 電車に乗るときにはちらりと電車内を確認する。 そして電車のどこかの席に死神が座っていたら、人身事故などのトラブルが高い確率で起きるという。 だから、その電車は見送って次の電車を待つ。 そんな馬鹿なと思ったが、 自分も自分の運転する電車ではないが、何度か見たことがあると先輩は言う。 死神かどうかはわからない。 ただ全身真っ黒。 どう見ても人間じゃない。 それが、席にぽつんと座っているという。 確認しないで乗ることは滅多にしないが、 逆にスリルを楽しむように客として飛び乗った電車にたまたま死神がいたこともある。 確認する時間がないときもある。 そういう場合は、一種の賭け。 乗ってしまっても、途中で降りることも出来るから、死神を見つけて、はいさよならということも出来てしまう。 『とてもじゃないが、確認しないで乗ることはしないし、死神と一緒に電車になんてぜったいに乗りたくないね』 と、先輩は笑いながら後輩の玉造さんを脅して、してやったりといった顔をした。
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