腕のいい占い師

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 虚ろな目が、占い師の手元――水晶玉のあたりに注がれる。  占い師はその言葉を聞き返そうとしたが、女性は薄っすらと笑みを浮かべ、 「私を騙したんです。あの人。最初は独身だって。結婚してるってばれてからは、すぐ別れるって。その後は、生まれ変わったら一緒になろうって。もう私、騙されない。私を騙すのはゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。絶対。絶対。絶対」  どんどん早口に、取り憑かれたような口調になる。  美しい顔が歪み、笑いと怒りと憎悪が交互に浮かんでは消える。 「生まれ変わるって言うなら一度死ななきゃ駄目でしょ生まれるには死なないとだから私手伝ってあげるってそしたら無理だって言うのおかしいでしょ死ななきゃ生まれ変われないのにやっぱり死ねないってなんなのなんなのよ自分で言ったんじゃない一緒になろうってあれも嘘だったの?」  狂ったレコーダーのように調子のおかしい声が狭い部屋にまき散らされる。  言葉を途切れさせた女性が、糸で釣られた人形のように不自然に立ち上がった。  真っ白い顔に、血走った目だけが赤い。  その目が、占い師を射抜くように見据えた。 「あなたも私を騙してるんですか?」  ひっ、と喉で声が出た。  大丈夫、大丈夫、ちょっと頭がおかしい客の相手ならば今までいくらでもしてきた。とにかく、安心させること。信用させること。 「騙してなんていませんよ。――あの世から、あなたのことを想っているってことです」  一言一言、諭すように告げると、女性の表情が微かに探るようになった。 「それなら、私があの人をどうやって殺したかも見えてますよね?当ててくれますよね?」  知るわけがない!  人を殺す方法なんて、星の数ほどある。洗面器の水でだって溺死できるのだ。  だが、そこでわからないと答えたら、目の前の客が何をしてくるかわからない。今こそ、これまでの占い師としての手腕を最大限に発揮しなければ。
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