月の欠片。

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 初めてのお葬式は、粛々と進んだ。  聞き慣れないお経も、黒一色の空間も、噎せ返るような生花の匂いも、それに合わさるお線香の匂いも、大人達の涙も、それら全て私の知っている燈月とかけ離れていて、それが燈月のための式だと理解していても、何だか少しだけ怖かった。 「友人代表スピーチ、音更綴さん、当麻美織さん、お願いします」 「はい。……行こう、つづる」 「うん……」  知らない大人に不意に名前を呼ばれて、背筋が伸びた。私達は頷き合って、僅かに緊張しながら皆の前へと移動する。  燈月の眠る棺の側で、たくさんの花を背景にして、遺影の黒枠の中でいつも通り微笑む燈月と三人で並ぶ。  それはとても、おかしな感覚だった。  そして前に立って初めて、これだけの人達が集まっていたのだと会場中を見渡せた。  此処に居る全員が、燈月を愛して悼んでいる。  最前列に居た久しぶりに見る龍介くんは、記憶の中よりもかなり成長していたけれど、幼い頃と同じように泣き腫らした目を真っ赤にさせていた。  燈月のご両親は喪主として気丈に振る舞おうとしているけれど、最後に会った時よりもかなり憔悴していた。  会場には他にも、私のお母さんや美織のお母さんも居た。知らない人もたくさん居た。  私達が知るよりも多く、燈月には燈月の時間があったのだ。  それらがもう、全て唐突になくなってしまって、今後新しく増えることはない。  燈月の時間は止まってしまったのだ。 『死』というものを、その時改めて突き付けられた。
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