2.スターダム

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 評判を聞いた大手音楽事務所のスカウト。  瞬く間にデビューが決まり、彼らの音楽は凄い勢いで若者の心を掴んで行き、そして一年ほどの間に日本中のホールで演奏するようになっていった。  その間も、偶然ではあるものの、何度かあの公園で会い、猫と共に会話をした。  けれど私は、彼の音楽活動に触れる事はしなかった。  あの日、ライブハウスで歌っていた彼と、猫を撫でながら笑う彼が、どうしても結びつかなかった。  いや、多分、どんどん違う世界の人になっていく彼と、今、目の前にいる彼を、結びつけたくなかったんだと思う。    そして彼も、私のことを何も、そう……名前すら聞く事はなかった。  彼が三年生になってからは、その姿を見掛ける事は、大学でも公園でも、すっかりなくなってしまった。  音楽活動に忙しく、休学しているのか、もしかしたら、もう辞めてしまったのかも知れないと思った。
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