3.星とジャングルジム

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「久し振りですね。バンド、凄いことになってますね」  私はこの日初めて、彼の音楽活動に触れた。 「あぁ……有難いんだけど、自分でもよく分かんね……」  描いた夢が叶い、それがどんどん広がって行き、自分の目の届かない所まで行ってしまうと、人は戸惑ってしまうのだろうか……  彼のぼそりと呟いた声や表情に、そんなことを感じてしまった。 「明後日、アメリカに行くんだ。恵まれた環境の中で、レコーディングさせて貰えるらしい。 それが終わって日本に戻ったら、目標にしてた夏フェスのセンターステージに出られる事になってる」 彼は嬉しそうに、けれど、少しだけ寂しそうな笑顔でそう言った。 「すごーい! 順風満帆じゃないですか」 「うん、そうだね……」  彼らの音楽が認められた事は素直に嬉しい。 けれど彼は、どんどん遠い人になっていく……    私が彼に抱いている感情が恋なのかどうなのか、考えないようにして来た。 もう彼は手の届かない人だと思ったから……。  少しの沈黙の後、スッと息を吸った彼の唇から、1フレーズだけ歌が(こぼ)れた。 「新曲ですか?」  実はあれから私は、彼のバンドの曲は全部聴き漁った。 知らない曲などもうない。 「うん……。今、星みたいに降って来た」 「キザですね。嘘です、流石プロですよね」
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