東州茶房

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桜の下に   少女は、桜の下で微笑んでいた。 淡いピンク色の花びらが、少女は大好きだった。 そして、校舎の裏の一番目立たない場所にあるこの桜の木が、一番綺麗で好きだった。 桜の花びらはね、本当は白いんだよ。 雪のように白い花びらは、その根元に埋められた死体の血を吸って、薄く紅色に染まるんだよ。 桜が美しいのは、血を吸うからだよ。 幼い頃、祖母が冗談で言った台詞を思い出した。 桜が綺麗なのは、血を吸って薄紅色に染まるから・・・。 少女は、小学校の周りをぐるりと囲う桜の木を、目を細めて眺めた。 給食棟の裏の木は、ニワトリ。 体育館の横の木は、うさぎ。 特別棟の奥の木は、ネコ。 プールの側の木は、犬。 みんな、綺麗に咲いている桜ばかりだ。 でも、この木がやっぱり一番綺麗。と少女は嬉しそうに桜を見上げた。 まだほとんどが五分咲きの中で、少女が見ている桜は、見事に咲き誇っていた。 少女はポケットから、小さなガラガラを取り出した。 じゃあね、また明日ね。 少女はガラガラを桜の木の根元に置くと、パタパタと走っていった。 そして、少女は呟く。 やっぱり、桜はピンク色だから、綺麗なのよね、と・・・。 了
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