6人が本棚に入れています
本棚に追加
19980611
夢を見ていた
夢を追っていた
夢を夢見ていた
自分の中に芽生えた野心を夢だと思っていた
自分になど何も出来やしないのだと
自分など生きている価値などないのだと
今まで生きてきた自分を振り返ると
そんな風にしか思っていなかった
誰も生きていいのだと言わない代わりに
誰も死んでしまえと言わないだけ
何かがしたかった
何かをやり遂げたかった
自分に何か出来ることはないか
他人のためなどではない
自己満足のための自己欺瞞
自分の存在価値を見出したくて
自分に出来る何かを探していた
夢という大義名分の元に
束の間の自由という時間を手に入れた
夢を追い求めているのだから
生きていてもいいのだと
夢を叶えたいのだから
誰も邪魔をしないでくれと
そこに在ることを許される場所を手に入れた
ただそれだけ
夢はどこにあるのか
夢など本当に叶うものなのか
誰も知らない誰も教えてくれない誰も諭してくれない
それが本当に夢なのか大義名分なのか
それを知っているのは己の中に潜んだ誰も知らない自分自身
誰のために望んだのかもわからないほどに
私はもう私ではなくなってしまったのだろうか
私が私ですらない
だって誰かがいるじゃないか
自分の中で笑う誰かがいるじゃないか
本当の自分本当の気持ち本当の心
誰も知らない本当の私
存在意義を持てなかった本当の私
嘘をつく自分に慣れて
本当は嫌なのに
人に合わせる自分に慣れて
自分の意思を殺して
誰も要らないと拒んだくせに
人当たり良く嘘をついて誰に慕ってもらいたいの
夢自由人生嘘孤独拒絶
たくさんの飾りと見えない鎧を纏って
私は私でなくなった
嘘をついて愛想笑いを浮かべて人の笑顔を疑って
自由と夢と存在理由を手に入れた
消えてしまったのは本当の自分
今ここに在るのは偽りの抜け殻
出ておいで
もう誰も邪魔などしないから
子供の頃に閉じ込めてしまった自分自身
もう誰も責めたりしないから
自分自身の生きたいようにすればいいと気付いたから
他人など私の人生に口出しなどするものではないから
もう私の中で嘘吐きと罵るのはやめて
ひとつになろう
閉じ込めてしまったのは私だけれど
泣きながら嘲笑う自分に手を延ばそう
殺してしまう理由などないのだから
生きていこう
どんなに嫌でもうざったくても
一度は夢見た夢を追いかけて死ぬのもいいじゃないか
叶わなくても挫折しても打ちひしがれても
夢は夢自分は自分人生は人生
嘘でもいいから生きていて良かったと
言ってみたいじゃないか
だから私は私になろう
偽りのない自分自身
そんなことすら嘘かもしれないけれど
夢を見るのもいいじゃないか
夢を追うのもいいじゃないか
出ておいで
すべてを否定したがる私の中の本当の私
私はもう私を否定したりはしないから
了
最初のコメントを投稿しよう!