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第2話
それから1週間、何度か彼女の携帯電話や、家の固定電話にかけたが、誰も出なかった。
呼び出し音が、むなしく鳴り続けるだけだった。
親友の携帯電話にもかけた。
文さんが出てくれるのではないかと期待したが、つながらなかった。
初七日の法要は、葬式の日に一緒に済ませていた。
その時に、四十九日の法要の日程が決まったら教えてくれ、と彼女に頼んでおいた。
しかし、その報せが来るまで、こちらから連絡を取らないということが出来なかった。
定期的に、なんなら毎日でも、彼女と連絡が取れていたかった。
親友とその妻である文さんと俺は、大学の同窓だったから、文さんも俺の友人と呼べるし、彼女を取り巻く環境も知っている。
だからこそ、分かっていた。
いま文さんを最も気に掛けているのは、俺だ。
心配のあまり、葬式から8日目の今日、俺は仕事帰りに親友の家に寄ることにした。
いろいろ考えて、会社を退勤してから、野菜や果物が挟んである三角サンドウィッチを購入していった。
スーツの上着を引っ掛けた鞄を持つ方とは逆の手に、サンドウィッチの袋を携えて、職場の最寄り駅から、家とは反対方向の電車に乗った。
目的地に着いて、外から見上げる。
築年数は経っているが、建った時はモダンデザインであったのだろうことが分かる造りのマンション。
その5階にあるのが、親友とその妻の住居・森家だ。
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