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第3話
森家の窓は明るかった。
オートロックではないマンションなので、エレベーターを使って部屋の前まで行く。
チャイムを押しても、返事がない。
耳をすましても、中で人が動くような音がしない。
ドアの前で、大声で名乗ってみるが、それは開かない。
ここには、親友がまだ独身の頃から住んでいた。
広めの1LDKで、ここで文さんと同棲して、結婚して、子を授からないまま20年弱住み続け、親友は死んでしまった。
文さんはひとり、ここに取り残されている。
試しに、玄関のドアノブに手を掛けて回してみた。
回る。
ほんの少し、ドアを開け、再度名乗る。
突如、もあっとした異臭がして、咄嗟にドアを閉めた。
文さんと連絡が取れないのは、彼女が親友のあとを追ってしまったからではないか、と思うことがあった。
だから今嗅いだ匂いを疑ったが、おそらく今のは、排水溝を掃除していない匂いや、梅雨時期のカビの臭さだ。
俺は意を決して、もう一度ドアを開けた。
一度嗅いだ匂いは、ほんの少し鼻に抗体が出来ていて、先程よりは気にならない。
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