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第8話
俺は、文さんの前からサンドウィッチの皿を除けて、代わりにマグカップを置いた。
「サンドウィッチはラップを掛けておくから、残りは明日の朝、また才知と食べればいいよ。さあハーブティーも飲んで」
ハーブティーの香りに反応したのか、文さんはマグカップの前で大きく息を吸った。
マグカップを手に取り、少しずつ飲んで、7、8割なくなったところで
「あたたかい」
と言った。
この1週間、文さんは冷蔵庫の中にあった飲み物しか飲んでいなかったのだろう。
あたたかい飲み物が身に染みたのだ。
「べつの飲み物を淹れようか。キッチンに緑茶とか紅茶とかもあるよね」
俺の言葉に、文さんは小首を傾げた。
本当に思い出せないのだろう。
傾げたまま止まってしまった。
あたたかいもの、というキーワードで思い付いたことを、俺は文さんに提案した。
「じゃあさ、お風呂入ろうよ。最近、梅雨寒だったからね。体をあたためようよ」
「うん、入りたい」
文さんの希望が聞けて、俺は少し嬉しくなった。
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