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「クースクスクス、なんて見晴らしがいいのかしらぁ」   「、ムカつくのでその笑い方をやめていただけませんか……このクソ女」  黒髪黒目の完璧執事。その執事が顔を歪めて主に向かって毒を吐いた。 「あらぁ、そんな口を聞いてもいいの?誰のおかげでその姿になれたと思っているのかしら。あたしとした契約……忘れたとは言わせないわよ」  クースクスクス。と、楽しそうな笑い声が響いたのだった。 *** 「あらぁ、やっとお目覚めみたいね?」  目が覚めたら、あの憎たらしい女がニヤニヤと唇を歪めて僕を眺めていた。以前やさっき見た時とは違い、少し癖のある金色の髪を指先でくるくると弄びながら青い瞳を細めて「クースクスクス」と笑っている。グリモワールの力を使えば姿を変えることなど容易だ。僕はいつも同じ色合いの姿にばかり変身しているがそれはあの姿が気に入っているからであって他の姿になれないわけじゃない。だからこの女が全然違う姿でも特に何も思わないし、なによりもこの笑い方ですぐにわかるが……。ただひたすらに気分がムカついた。 「お、お前……!」  起き上がろうとするが、体が動かない。まるで酷い筋肉痛のように体中に痛みが走り、指先を動かすたびに痛みが響いた。 「まだ動かない方がいいわ。グリモワールの力を失ったせいで体に反動が来ているのよ。まぁ、グリモワールの持ち主ならそんな事を知ってて当然……って、その顔は知らなかったのかしら?  あらぁ……、もしかしてグリモワールの持ち主になって日が浅いの?それくらい常識よ。持ち主を不老不死にして魔力は使い放題の奇跡のグリモワールですもの、それならそれなりのリスクだって伴うのは常識……やだぁ、そんなことも知らずにグリモワールの持ち主を名乗っていたのね。偉そうな態度の割に見た目通りのおこちゃまだったのねぇ。クースクスクス」 「……う、うるさい!そんなことくらいわかって……いででで!」 「クースクスクス、しばらく体は動かないかもね。グリモワールは使い物にならないし悪魔もいないんじゃ、今のあなたはただの人間……いえ、ただのお子ちゃまね!悪態だけは一人前の何の役にも立たないお子ちゃまよぉ~っ「いいから、なんとかしろ!僕で遊ぶな!聞いてるのか、青のグリモワールの持ち主!」……もぉ、それが人に頼む態度なのかしら?」  髪を弄ぶのをやめないまま「お嬢様よ。ルリアお嬢様。この辺では子爵令嬢として過ごしているの」とため息混じりに口を開いた。 「え」  戸惑う僕にまたもや「クースクスクス」と笑う。 「あなた、あの悪魔を助けたいんでしょ?手助けしてあげてもいいけれど、その分働きなさいーーーーあなた、あたしの執事になってもらうわ」  こうして、青のグリモワールの力により執事姿にされた僕はこのムカつく女の執事として働く事になった。僕のグリモワールの回復とアリスティアを取り戻す為に。
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