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生きたまま両足を裁断機の中に突っ込んで細切れにしてやった奴もいたし、腸を引きずり出してやった奴もいた。それらは全て、テレビで国民たちに見せてきた行いである。大総統の考えこそ正しい、他の国がどうこういうやれ“人権問題ガー”だの“国際法ガー”だのというのは自分にはまったく関係がない。逆らえば、恐ろしく苦痛に満ちた残酷な死が待っている。それは、、全国民に骨の髄まで叩き込んできたことのはずなのだ。
そしてそれは、逆らうこと、に限ったことではない。
目の前の学者どももよく知っているはずなのである。大総統が一番嫌いなのは反逆者だが、二番目に嫌いなのが無能な人間であるということを。
「つまり、君達は無能ということか?」
ずらりと並んだのは、誰も彼も有名な大学を卒業し、大きな研究室を持った名だたる研究者と調査団のリーダーばかりであった。成果をもう少しだけお待ちください、を繰り返して回答を先延ばしにしてきた挙句、自分を前にしても“わからない”で済ませられると思ったなら少々片腹痛いことである。
そんな風にナメ腐った態度を取っても、殺されないなんて思われているとしたら。それは、恐怖が足らないということに他ならない。もう少しばかり、きついお灸を据えてやらねばならないだろうか、と私は目を細める。
まずは、この中から一人。誰でもいいから目の前で残酷に拷問して処刑してやるのである。そして、残る全員にその様を見せつけ、次はお前だと知らしめるのだ。否、お前だけではなく家族全員こうしてやるぞと脅せばいい。世界最強のA国軍がバッグについた自分に、逆らえる人間などいるはずもない。彼等も血眼で、世界の異変を調べて解決策を見つけようとするはずだと、そう思った。
そう。それは、彼等もわかりきっていたはずなのだが。
「本当に、申し訳ありません!」
彼等がやったことは。五人で揃って、その場で土下座することだったのである。
「実は、原因であろうものはなんとなく分かっているのです。ですが、それは私達にはどうしようもないものでして……!」
「どうしようもないもの?それはなんだ」
「そ、それに関しては……天文学の専門家にお尋ねして頂くしかありません!そちらが口を噤むのであれば、専門外の我々からお伝えできることは何もないのです……!」
「…………」
彼等の態度の理由に、一応納得はした。連中が今回恐れたのが、どうやら自分だけではないようだということも。
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