積木の世界

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 自分の手元には、あらゆるプロフェッショナルが存在している。環境のプロ、生物学のプロ、気象のプロ、行動学のプロ、心理学のプロなどなど。勿論、この地球の空の向こう側について詳しい、天文学のプロも雇ってはいた。いたのだが。  実は、今この場にその男を呼び出さなかったのは訳がある。彼等は総じて、頭がおかしい人間ばかりであるからだ。 『天文学は、タブーなのでございます。大総統であっても、その詳しい秘密をお伝えすることはできません』  かつて。自分の祖父が、同じように天文学の権威を呼び出したことがある。  彼等は宇宙の詳しい研究をしているはずだというのに、何故かその秘密をちっとも話そうとはしない。今の大総統が知っているのは、一般民衆も知っているようなレベルの知識しかないのだ。つまり、この星が地球という名前であり、太陽系というものに属していること。太陽を中心に回っている惑星で、他にも水星や木星といった天体があって――とまあ、それくらいのレベルなのである。  我が血筋らしく、知識欲の塊である祖父はそれが我慢ならなかった。自分は、民衆よりも遥かに知識を持っていなければ、己の権威は保てないものと考えていたのだる。多くのエキスパートを専用に召し抱えるようになったのも祖父の代からだった。天文学についても、自分こそが民衆より、そして他国よりも豊富な知識を持っているのが当然だと考えていたのである。  しかし、天文学の権威は首を縦に振ろうとはしなかった。そればかりか。 『どうしても教えて欲しいというのであれば、やむをえません』  なんとその男は、自分で自分の口を封じるためその場で自害したのである。隠し持っていたナイフで、己の首を掻き切ったのだ。これには、肝が据わっているはずの祖父も驚かされたという。天文学の秘密とやらは、命を賭けてでも守らなければいけないものなのか、と。  そんなことが、他の天文学者にも続いた。  彼等は口々に、お伝えしたいのはやまやまだがそれを言ったら最後殺される、と返してきたのだ。どうやら、大総統に殺されるよりも恐ろしいことがあるらしい。いくら無能が許せないからといって、呼び出すたびに天文学者に目の前で死体になられてしまってはラチがあかない。  やむなく、祖父から自分の代まで、天文学に関してはある程度秘匿にすることを特例で許していたのだが。 「……今回の世界的な大災害の理由、その天文学の領域であると?」
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