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「左様でございます。私達にはどうすることもできません。できるとしたら、何かの秘密を知っているであろう天文学者様でしかないと」
「……くそっ」
面倒だが、やむをえない。
大総統は、仕方なく彼等をそのまま家に帰した。どうやら本気で、彼等に“命を賭けて事態を打開しろ”と詰め寄ってもどうにもならないという状況らしい。
そして、何十年かぶりに、自分の前に天文学者を呼び出すことにしたのである。電話で使者が伝えに行くと、現在最も宇宙に詳しいとされている男は、こう返してきたのだった。
『あと三日だけ、待ってください。ようやく、全てをお話する許可を取ることができそうなのです』
そう言われては、待たないわけにもいかない。念のため、奴が別の国逃げないかだけ監視させ、その三日間を待つことにしたのだ。天文学者の男は、現在家族が誰もいない天涯孤独の身である。そういう人間は失うものが何もない。やぶれかぶれで、どんな行動を起こすかわかったものではないからだ。本人は祖父母の代から、大総統本人を神格化して考えるほどの忠義者であるらしいと聞いていても、である。
しかし、三日後。天文学者は大人しく、自分の前に姿を現すことになるのである。彼は恭しく自分に一礼して、こう告げたのだった。
「大総統様。まずは祖父の無礼をお許しください。祖父が、天文学の秘密を守るべく自害したということは私も承知しております。大総統様の御前を汚したこと、本当に申し訳なく思っております」
「そのような御託はどうでもいい。秘密を話すつもりにはなったんだろうな」
「はい」
ですが、大総統様はあまり信じられない事実であるかもしれません、と彼は前置きして。
「実は、この地球という星は、巨大な宇宙船なのでございます」
文字通り、眉唾でしかない話を始めたのである。
「地球のコアの中に、まさしくこの星に生命を誕生させ、地球をコントロールしてきた神様とも言うべき存在がいるのです。その神様は、我々学者たちに言いました……自分たちの存在が、広く知られないようにしてくれ、と。もしそうなったら自分はこの惑星を壊した後捨てて、別の星に行ってしまうからと。私達が、調査で得た情報の全てを大総統様にお伝えできなかったのはそのためでございます。私達は脅されていたのです、地球全ての民の命を盾に」
「ま、待て待て待て待て。この惑星が、宇宙船?そのような話、信じられるはずがなかろう!」
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